
88年のデビュー曲「雨酒場」はじめ、第54回日本レコード大賞優秀作品賞を受賞した「酒のやど」(12年)、今年3月リリースの吉幾三とのデュエット曲「明日の夫婦酒」など、酒にまつわる曲は少なくない。香西かおり(51)は、女性演歌歌手の中ではお酒好きのひとりに数えられ、人脈の広さは抜群だ。「気を使わなくてすむから誘いやすいんだよ」こう言われて、もう何年になるかしら。ご一緒するのは、山本譲二さん、鳥羽一郎さん、吉幾三さん、角川博さん、それにコロちゃん(コロッケ)が多いですね。劇場公演やテレビ収録の後に、「まあ、一杯行こうか」って感じで声をかけられます。どうも、女とは見てもらっていないらしく、どちらかといえば「弟分」。それが“気を使わなくてすむ”理由のようですが、これって喜んでいいのかしら……。行くのは、NHK放送センターで収録があった時は、地元である渋谷界隈です。すぐに集まれますからね。吉さんとなら、贔屓にされてる人形町の料理屋。勝手知ったる相手の場合は、ある程度お飲みになると「あとはよろしく」とおっしゃって先に帰られますね。鳥羽さんは焼き鳥屋さんがお好き。ビールから始まって、日本酒も焼酎も、ビールと同じペースで“カンカンカン”と、せわしなくマイペースで飲み、やはり先に帰られます。お2人とも、酒席は明るく楽しいですよ。先に帰られるのは、長居すると周囲の人が気を使うから。そんなところがスマートですよね。仕事柄、全国各地へお邪魔してますから、行きつけのお店はあちらこちらにあります。例えば、札幌でしたらススキノの「ろばた大助別亭」。ここは松山千春さん御用達の炉端焼き店で、10年以上前になりますが、札幌・厚生年金会館で公演があった時にご招待していただいて以来、札幌へ行くたびに通っています。お料理は道内各地で収穫され、水揚げされる旬の山の幸、海の幸ばかり。素材がいいから、何を食べてもおいしいんです。例えば、ホッケ。大きさも脂のノリも、本州で売ってるものとは別物ですね。面白いのは、千春さんは一滴もお酒をお飲みにならないこと。それでも「せっかく北海道に来てくれたんだから」って、ご自分はソフトドリンクで最後まで付き合ってくださるんです。それにトークが面白いので、いつもお酒と会話に酔わせてもらっています。福岡なら中洲の馬肉料理がおいしい「馬加処 いとう」。ここは料理のおいしさはもちろんですが、ご主人と女将さんのお人柄がよく、私にとっては“九州のお父さん、お母さん”のような存在なんです。九州ですから、飲むのはもちろん焼酎です。何でも飲みますが、最後に落ち着くのは、香りがいい芋の水割り。九州に“帰った”と実感できるひとときです。ご主人とは、お酒のキャッチボールもしてるんですよ。年に3、4回、私が限定日本酒を一升瓶で6本送り、ご主人からは九州の珍しい焼酎をこれまた一升瓶で6本。こんなやりとりは10年近く続いてるんじゃないかしら。自分が気に入ったものを大切な方にも飲んでいただいたり使ってもらうのは、すごくうれしい。対価を考えると長続きしませんが、相手を思いやる気持ちがこもっていれば、うわべだけではないお付き合いができますよね。 「いとう」のご主人とは、まさにこんな関係なんです。お酒のキャッチボールは、送る時もいただいた時もすごく心が温かくなるんですよ。
Yahoo!ニュースより